球場の熱中症対策は「測る」から始まる。ベルーナドームの実証が示す次の一手
ニュースの概要
ニフコは、気温・湿度・暑さ指数(WBGT)を自動で測り、離れた場所からパソコンやスマートフォンで確認できる熱中症対策システム「NETSZERO」を、ベルーナドームに本格導入しました。2026年7月からおよそ2カ月間の実証実験を行い、測定する場所とセンサーの数を増やしています。ドーム内の複数地点の状況をほぼリアルタイムで見られるようにし、データはクラウド上に蓄積されます。これにより、管理者どうしが同じ数字を見ながら判断でき、環境データの分析も楽になります。同社は今後、学校や自治体、企業などへの展開も視野に入れています。
引用元: ニフコの熱中症対策システム「NETSZERO™」、ベルーナドームに本格導入(PR TIMES)
分析・見解
屋根付き球場でも暑さは一様ではない
「ドームなら涼しい」と考える人は多いでしょう。しかし実際には、空調が効く場所と効きにくい場所の差が大きい施設です。外野スタンドの上段、通路の突き当たり、日差しが入る開口部の近くでは、同じ時刻でも体感が大きく違います。
今回の導入が示すのは、施設全体で一つの温度計を見る時代の終わりです。複数地点を同時に測ると、暑さのたまり場が数字で見えます。
気温ではなく暑さ指数を使う意味
熱中症の危険度は、気温だけでは決まりません。湿度や日射、風の影響も大きく関わります。それらをまとめて表した指標が暑さ指数(WBGT)です。環境省は、この数値が31以上なら「危険」、28以上31未満なら「厳重警戒」と区分しています。
気温30度でも、湿度が高ければ危険度は跳ね上がります。観客が多く集まる球場は、人の体温や熱気で湿度が上がりやすい場所です。気温計だけでは見落とす危険を、暑さ指数なら拾えます。
勘と経験から、共有できる数字へ
従来の現場では、ベテラン職員の「今日は蒸すな」という感覚に頼る場面が多くありました。この感覚は貴重です。ただし、人によって判断がぶれます。交代したときに引き継ぎにくい点も弱みです。
クラウドにデータを残す利点は、ここにあります。警備、医務、運営の担当者が同じ画面を見て、同じ基準で動けます。さらに、過去の同じ条件の試合と比べることもできます。たとえば、満員の週末ナイターで、どの席の暑さ指数がいつ上がったかを振り返れば、次回は先回りして給水所や休憩場所を増やせます。
見えるようになった後の運用が成否を分ける
計測は入口にすぎません。数字が基準を超えたときに、誰が何をするのか。この取り決めがなければ、画面は飾りになります。
野球場とサッカー場の事例を見ても、注意喚起のアナウンス、無料の水の配布、日陰の開放といった対応を、段階ごとに決めている施設ほど動きが速い傾向があります。今回の約2カ月の実証は、数字を取る段階から、対応手順に結びつける段階へ進むための土台づくりだったと読めます。今後は、観客向けの表示や案内と連動できるかが、次の焦点になるでしょう。
ビジネスへの影響
屋外・半屋外の施設運営者が今すぐ見直す点
球場に限らず、体育館、駅構内、物流倉庫、工場の出荷場なども同じ課題を抱えます。まず自施設の「暑い場所」を、感覚ではなく数字で洗い出してください。センサーを数カ所に置いて一シーズン測るだけでも、対策に使う資金の優先順位がはっきりします。
費用を考えるときは、機器代だけでなく、事故が起きた場合の損失と比べることが大切です。救急搬送、イベントの中断、信頼の低下は、一度で数百万円規模の影響になり得ます。
導入前に決めておきたい三つの約束事
一つ目は基準です。暑さ指数がいくつになったら注意、警戒、中止検討とするかを、事前に文書にします。二つ目は担当です。画面を見る人と、現場へ指示を出す人を分けて決めます。三つ目は記録です。対応した内容と結果を残しておけば、翌年の改善と、万一の説明責任の両方に使えます。
また、学校や自治体では、部活動や屋外行事の中止判断に数字を使う動きが広がっています。判断の根拠が明確になれば、保護者への説明もしやすくなります。企業の安全衛生担当者にとっても、法令順守の証拠づくりとして有効です。まずは小規模な試験導入から始め、運用を固めてから範囲を広げる進め方をお勧めします。